構造懇話会の紹介


 構造懇話会は昭和42年9月(1967年)に設立されました。当時、土木技術者が最も関心をもったのは「夢の架け橋」といわれた明石海峡大橋でした。地元の神戸市としては率先して調査研究がなされ、早期の架橋実現を目指していた時期でした。このような状況下で神戸市より本会の設立の提案がありました。当時の原口神戸市長さんのお力添えもあったときいています。これは地元兵庫県の産官学が一体となって研究会または懇談会を設立する機運が盛り上がり、昭和42年9月に設立準備会が開催されました。初代会長に推挙された神戸大学畑中元弘先生のお誘いにより筆者も準備会に出席する機会を得ました。当時の設立趣意書には産官学から発起人として5名の方が挙がっていました。本準備会ではいろいろと討議されました。本会の名称については本会の趣旨である各種の構造物の設計、施工や架設、材料など構造物全般について自由な雰囲気で意見を述べ、技術者間の情報交換や親睦を図ることが目的ですので、「構造工学」とか「研究会」といった用語を省き「構造懇話会」という親しみやすい名称に決まりました。現在もその精神が引き継がれています。約40年の歳月が経過したことになります。

 構造懇話会の運営や組織について述べます。現行の会則に沿って説明します。会長は神戸大学の川谷充郎先生で副会長は元神戸高専の嵯峨晃先生です。運営委員と幹事は会員より若干名選ばれ会の基本方針を提案します。実務にあたる事務局は代表幹事(1社)と協力幹事(2社)で構成され任期は1年で輪番制です。特に歴代の代表および協力幹事のご努力により長年にわたり本会が円滑に運営されてきました。構成会員は4種類あります。まず団体会員は各企業と神戸市役所と兵庫県庁よりなり、現在では22団体ですが、その数は年度により多少増減しています。個人会員は団体会員以外の会員で、現在では大学と高専の教員です。さらに規定により定められた名誉会員と特別会員が設けられています。

 次に構造懇話会の活動内容について簡単に説明します。平成19年度の事業計画によると5月には総会を、11月には見学会を開催します。例会は7回予定されています。総会は本来の任務(予算と決算、事業計画)と特別講演会をも開催します。ここでは専門外の講師をお招きしたこともあります。例会は通常一日2テーマを発表し意見交換をします。また年1回は新例会と称して1テーマを数名の話題提供者による発表会をも実施しています。11月には見学会を開催します。一般に1泊で、やや遠方の諸施設や建設現場を見学しています。記念企画として、行事が通算200回記念(昭和62年)の際にはタイに赴きラマ6世橋の見学と斜張橋の国際会議に参加しました。また300回(平成8年)と400回記念(平成18年)の際は双方ともに香港に赴き、チンカウ橋、ストンカッターズ橋をはじめ空港ビルやトンネル工事を見学する機会を得ました。ちなみに平成19年度中に行事数は通算415回を数えることになります。

 構造懇話会の一つの試みとして平成4年に「水中トンネルに関する調査会」を設けました。約20回にわたり勉強会を持ち、平成6年には土木学会関西支部の共同研究グループに参加が認められ、平成8年9月にワークショップを開催する運びとなりました。本調査会は当時の会長の神戸大学桜井春輔先生のご発案によるもので、それに賛同した会員有志で編成されました。この調査計画案は神戸空港と関西空港間を水中トンネルで結び、鉄道による連絡用路線を構築するものです。文献調査をはじめとして、考えうる範囲で設計や施工を考慮して路線図などを作成し基本計画をたてました。

 平成7年1月17日、兵庫県南部地震が発生しました。都市直下型地震による甚大な被害をうけ、会員各位におかれてはそれぞれの立場で震害調査や諸施設の復興計画や復旧作業に日夜携わられ貴重な体験をされたことでしょう。本会は街もいまだ騒然とし、交通もままならぬ3月27日に神戸大学で臨時の例会が開かれました。その際、40余名の会員が参加され大谷恭弘、宮本文穂両先生による被害調査報告会がもたれました。以後の総会においては地震学の神戸大学寺島 敦先生や衝撃論の大阪府立大学谷村真治先生の講演会をもちました。

 構造懇話会の紹介と沿革を思い出すままに述べました。この40年間には社会・経済情勢も変化しました。一時期のように大きなプロジェクトも少なくなりました。本会の活動または発表内容にも幾分変化が見られます。今こそ新しい時代への模索が必要なときと考えます。また、本会の運営にも紆余曲折がありましたが、歴代会長のご指導のもと会員諸氏の協力と努力により約40年の歴史を築くことができました。今後とも本会のよき伝統を長く伝えたいものです。本会の趣旨に賛同され興味をもたれた技術者の方々の本会への参加を期待してやみません。お待ちしております。

 平成11年4月に構造懇話会の創立30年を記念して「構造懇話会30年のあゆみ」が発行されています。詳細な記録や文集が掲載されています。本文執筆に際しても参照させていただきましたことを付記します。

平成19年10月7日  文責  高端 宏直